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 やがて穏やかな寝息を立て始めたリーヴェを抱え直し、セアンはため息をつく。
「一体こいつは人を何だと思ってるんだか……」
 自分を暖房扱いした女の頬にかかる髪を指先でよけ、耳にかけてやる。
 するとみじろぎするので、リーヴェの体を抱え直した。
 掌に伝わる柔らかさに、セアンはため息をつく。
 トールと組ませなくて良かったと。
 彼は何のしがらみもない人間だ。こんな状況になった時に、弱った相手を突き放すことなんてできないだろうし、そのせいで口づけひとつ耐えることすら、苦行になってしまうだろう。  
 一時の感情に流される可能性を、同性だからこそセアンは疑い、トールと組ませないようにしたのだ。
 セアンとて女性に興味が無いわけではない。確実に後腐れのないようにしていただけで。
 それ以外の人間は、素っ気なさや、セアンの作った壁に戸惑い、皆自分から離れていってくれた。
 けれどリーヴェは、何を知っても意に介した様子がない。
 セアンの能力に関しても、毎朝起きたら外へ向かって一言叫ばずにいられないというような、ちょっと特殊な癖ぐらいに考えているに違いない。
 そんな風に思っているだろうと、ものすごく確信がある。
 セアンの力を無視できない人間は今まで何人もいたのに。
 その度に記憶を消さねばならなかったのに。
 だから逆に、心を許して頼りながらも、律儀にセアンの秘密を守ろうするリーヴェのような人間には慣れていない。
 ……どう接するべきなのか、この頃戸惑うことがある。
 セアンは母親を思い出す。
 他者に知られるのを畏れていた彼女。結局、伴侶にすら秘密を明かさなかったほどだ。
 それなのに子供を得て喜び、けれど知られるのが恐くて、何度もセアンに口外しないよう言い聞かせていた。
 矛盾を抱えていた人。
 家族以外に、この力のことを知られたなら化け物だと思われてしまう、と。
 そんな母親を見て育ったセアンは、だからこそどうしていいのかわからなくなる。家族でもないのに、セアンの特殊さを受け入れてしまったリーヴェを、どう思っていいのか……。
 ふと、セアンは横を向く。
 そこに、リーヴェを見守る相手がいるのを見分けられるのは、セアンだけだ。
 彼らの話しかける内容に、セアンはふと笑う。
「きっと、そうだろうな。分かってはいるんだ」
 返事をつぶやいて、セアンはリーヴェと額をくっつけた。
「分かってるんだ。お前がたいした奴だってことは」
 きつく抱きしめすぎたのか、リーヴェが嫌そうに唸る。
 けれどまだこの腕を離したくなくて、セアンは彼女の耳元で囁くように謳った。

 眠れ眠れ月の子よ
 星の恵みがお前を夢へと誘うだろう

 普遍的な子守歌は、セアンの声と相まって、眠り薬のように染み込んでいく。
 深い眠りに落ちてゆく彼女と額を触れ合わせながら、セアンは思った。
 どうして、彼女だったのだろうと。
 

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