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Celsus
オリジナル小説を掲載しています。
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「とにかく解決法は一つです」
 王妃の居室の中心で、集まった人々を見回したアマリエは告げた。
「国王陛下が【リーヴェに接触せずに】彼女を女の子と認めるようにすること。これに尽きます」
 重々しくうなずいたのは、リーヴェの同僚の女官達、そして近衛騎士達だ。
 十数人の近衛騎士のうち、一人がアマリエに質問する。
「けどよ、接触せずにってかなり難しくないか? この……」
 アマリエの隣で縮こまるようにして座っているリーヴェを指さし、ディックが続ける。
「女装姿でも信用できないって、かなり頭やばい人なんだろ?」
 聞いたリーヴェは激しく落ち込む。
 着飾っても女装してるだけだとか言われて、女だと思ってもらえないなんて、きっと世界中探しても自分だけに違いない。
 アンドレアス国王に「胸がある位で信用できるか、脱げ!」と言われて、頭が真っ白になったのは一時間前のことだ。
 運良くアンドレアスを追って、アマリエや近衛騎士達がきてくれらからなんとかなったものの。そうでなければ国王命令で何をさせられたか。
 更に王妃に睨まれて、国王はその場を引いた。が、いつまた「恋敵」だと勘違いしているリーヴェに喧嘩を売ってくるとも限らない。
 というか、忘れがちだがアンドレアスは国家の最高権力者なのだ。そんな相手が喧嘩を売ってきたら、さすがにリーヴェも太刀打ちできない。
 レオノーラも王国の共同統治者ではあるものの、他国から嫁いできた立場上、やはり権力では一段劣る。
 とんでもない事態に陥る前になんとかするには、アンドレアスになんとかしてリーヴェを女だと認識させなければならないのだ。
 もちろん、接触せずに。
 ディックに問われたアマリエは、既に考えがあると余裕の笑みを見せる。
「大丈夫です。皆さん思い出して下さい。アンドレアス陛下は人の物には手をお出しにならない、珍しい方です」
 浮気はするが、他人の妻は一顧だにしない。
 一度成り上がるために自分の妻を縁者だと言って紹介した貴族もいたらしいが、アンドレアスの動物的勘によって、人妻だとバレたという話もまことしやかに囁かれているほどだ。
「確かに人妻にはご興味のない方だけど……。恋人がいれば信用する、かしら?」
 シグリの呟きに、トールがげっと声を上げる。
「おい、誰かが犠牲になるってのか?」
 アマリエとシグリの言葉を総合すると、リーヴェが誰かと恋仲らしく見えたなら、国王もあれは女だったのだと理解してくれるのではないか、という作戦のようだ。しかも他人の物だとわかるので、リーヴェを疑っていても無体なことをし難いだろう。
 作戦は理解できる。
 しかし犠牲っていうのは酷い。リーヴェはトールに不服で一杯の視線を向ける。
 トールは、何か文句があるかという目で見下ろしてきた。
 しかしリーヴェとしては、彼に文句をつけることもできない。これから協力してもらわねばならないのだからだ。
 悔しさを噛みしめつつ、心の隅で「ホモだと疑われる」と言われなかっただけマシだろうかと考え、自分をなぐさめた。
「いいえ、誰か特定の人間が、というのは難しくありませんか? その人が勤務中にリーヴェを一人きりにするのは得策ではありませんし、アンドレアス陛下がたまたまその時しか様子を見に来られない場合も考えられます」
 四六時中、リーヴェが誰かと一緒にいて、恋人らしくしていなければならいのだとアマリエは力説した。
「ですから皆さん持ち回りで、ということでお願い致します。順番や時間などは後ほどホーヴァル隊長様よりお伝えいただく予定です。女官の皆様は、リーヴェを着飾らせるのを手伝って下さい」
 近衛隊の面々は少々疲れたような表情で、女官であるシグリ達は嬉しそうに返事をする。
 それを椅子に座って眺めていたレオノーラ王妃は、実に楽しそうに言った。
「皆さんよろしくね」
 その言葉を合図に、女官以外は王妃の居室を出て行く。
 小さな人の波の最後にまじって、リーヴェもその場を辞した。リーヴェにはこれから少し仕事があるのだ。
 廊下へ出て、ため息をつきながら歩いていると、不意に目の前を歩いていた人物の背中にぶつかる。
「うわっ、ごめっ」
 謝ったリーヴェは、ぶつかった相手を見ていぶかしむ。
「セアン? なんでこっちに用があるの?」
 この先の部屋には、女官の部屋しかない。
 まさか逢い引き!? と想像をめぐらせかけた時、セアンがリーヴェに向き直る。
 さらに一歩近づいてきて、リーヴェは自然と後退って廊下の壁に背があたった。
 無表情のままセアンは、壁に手をついた。リーヴェの頭の横だ。
 金の髪がさらりと揺れ、顔が近づき、その唇が耳元で囁く。
「お前、協力者相手についうっかり口が滑ったりするなよ」
「な、何を滑らすって?」
「俺の秘密だ。ラルスの時も思ったがお前はふらつきやすい。釘を刺しておこうと思ってな」
 その言葉を聞いた瞬間、リーヴェは思い切りセアンの足を踏んづけようとした。
 かわされたのでさらに追いかけたが、セアンはさっさとリーヴェと距離をとってしまっていた。
「少しは人のこと信用しなさいよね!」
 苛立ち紛れにそう言葉を投げつけると、
「期待している」
 セアンは淡く笑みを見せた。


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