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「くっ……面倒な」
 帯と上に羽織るガウンはいいが、コルセットを締めている紐がほどけにくい。
 リーヴェはお腹をひっこませてコルセットを回し、紐の位置を移動させようとした。が、脇のあたりまで動かすのがせいぜいだった。
 しかたなく横をむいてちょこちょこと紐をほどき、ようやくドレスから解放される。
 馬車で出発してそれほど経っていないが、リーヴェは急いで着替えていた。
 当初は最初の目的地まで、大人しく女官然としているつもりだったのだ。が、カールに宣戦布告された後では、そんな悠長なことをしていられない。
 カールに知れた以上、追っ手がかかることは確実だ。賭けの事もそうだが、ドレス姿でうっかり殺されては、悔やんでも悔やみきれない。
 急いで思う存分戦えるようにしておこうと思ったのだ。
 ようやくシャツを羽織るところまでたどりつく。
 強い風のせいで、馬車も通常よりガタガタと揺れていたが、ドレスを脱ぐよりは男物の服を着る方がずっと楽にできた。
 上からジャケットを着る前にと、結った髪をほどいて束ね直していると、馬車の扉が叩かれた。
 馬車の中はランプの明かりを灯している。そのため着替えを見られてはかなわないと、扉の窓にはカーテンを引いていた。
 それをめくると、横を併走しているトールが見えた。
 窓を横に滑らせて開けると、トールの声が聞こえる。
「もう着替えたのか。王都出たばっかだってのに、はえ~な」
「何かあってからじゃ困るじゃない」
 その時風が吹き込んできて、ジャケットを羽織っていないリーヴェの首筋を撫でていく。
 寒い、と感じた時にはくしゃみがでていた。
「はっくしゅん!」
「ぎえっ!」
 トールが急いで馬車から遠ざかった。
「お前、まだ風邪治ってなかったのかよ!」
「薬はもらって飲んでるってば。さっきまでは調子よかったんだけど。ところでちょっと遠すぎない?」
「伝染されてたまるか!」
 めちゃくちゃ嫌そうな顔で言われ、リーヴェはため息をつく。
「だって大声で話してたら、敵にみつかるじゃない」
「もう遅い!」
「……え?」
 トールが馬車を追い越して走っていく。
 前方に敵がいたようだ。
 馬車の後ろにいたらしいセアンも、それを追っていく。
 通りすがりざま、リーヴェに指示を出していった。
「お前は中にいて、備えておけ」
 リーヴェはうなずいて馬車のランプを消し、外の様子に目を凝らした。

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