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「……とまぁ、そんなわけ」
 カールがリーヴェに興味を持ってしまったこと。リーヴェの心を読み取りにくいので、心理的解剖をしたいがために、リーヴェに賭けを持ち出したことを語った。
 しかしそんなことをされれば、せっかくカール達がヴァルデマー公の件を阻止したのがリーヴェだと勘違いしているというのに、セアンのことがばれてしまう。
 かといって、王宮に残る王妃達のことを思えば、賭けを受けないわけにはいかなかった。
 聞き出したセアンは、深いため息をついた。
 それが本当に嫌そうなため息だったので、リーヴェは思わず「ごめん……」と謝ってしまう。
「お前が謝ることじゃない。早々に、俺がカールって奴に接触してどうにかしておけば良かったんだが……」
 常に王の側に居るので接触しづらい上、カール一人だけが能力者とは限らない。
 カールにセアンが能力を使った時に、他の者がそれに気づき、さらにそれを広めてしまっては隠れて行動してきた意味がないのだ。
 セアンの事がバレるだけではない。
「俺の能力が知られれば、今まで一般人だと思って生ぬるい方法を使ってきた敵が、どんな手を使うかわからないからな」
 ヴァルデマー公の件で、意外に能力者を多く囲っていそうだという予想できる以上、うかつなことはできない。
 やるならばなるべく、一人一人隔離してからでなければ。
「そういうのって、見えないお友達に聞くわけには……いかないのか」
 リーヴェはニナの時のことを思い出す。
 怨念を固めたようなニナの母親が、そういった事を聞き出すのを阻止していたのだ。
「単純なこと以上の物を聞き出せる相手っていうのは、そんなにいないからな。相手に合わせるのも割合難しい」
「どう難しいの?」
 セアンがためらうように間を置いて答えた。
「ニナの母親と死にかけ状態で会っただろう」
「うん」
「あれと同じような恨みつらみを、一人ずつ聞いて回らなくてはならないと考えれば、面倒さが理解できるか?」
「いっつもあんなの見てるの?」
 セアンは答えず、ため息をつく。
「……だからこんなにひねくれた性格になったのね」
 妙に納得したリーヴェだった。
 とにかくリーヴェが焦る原因を知ったセアンは、彼女の体調が問題ないとわかると、すぐに出発することを提案してきた。
「しかしその前に、一つ提案がある」
 部屋を出て行ったセアンは、やがて衣服を一式持って戻って来た。渡されて見れば、それは生成地を一度染めしただけの淡い青の女性服だ。標準的な庶民の服である。
 着替えろと言われて、リーヴェは彼の意図に気づく。
「目くらまし?」
「聞き込みに来た敵が不審に思っても、格好が違えば少しは不審に思うだろう」
 再びリーヴェは居間へ行って着替えることにした。
「どうやら元気になったみたいだね」
 居間で朝食の支度をしてくれていたサンナは、意味ありげにニヤニヤ笑っている。皿を並べていたロニヤも、少し頬を赤くしながらちらちらリーヴェを見ていた。
 絶対二人とも誤解してる。
 思わず訂正しようと口を開きかけ、リーヴェは思いとどまった。
 そうだった。駆け落ち二人組みに紛するには、ここで訂正しちゃいけない。
 渋々諦めて、サンナに服を貰った礼や泊めてもらった礼を言い、急いで着替える。
 寝間着代わりにしていた服の上から、薄青の木綿の外衣を羽織って、固めに織られた緑の帯を締める。
 着方自体は、庶民の服も王宮で着る服もそう変わりはないので、これでいいだろう。
 一応サンナに確認してもらうと、びっくりされた。
「いや違和感ないねぇ。どっからどう見ても村の娘みたいだね」
 そういう格好しているとお嬢様に見えないよと、良いのか悪いのか微妙な評価をもらった。リーヴェは扮装としてはこれでいいのかと、内心ため息をつく。
 そして朝食を先に食べさせてもらった後、帯に革のベルトを着け、剣を下げた。
 いつ戦闘になるのかわからない以上、身から離すわけにいかないのだ。
 さすがにその格好は、サンナもロニヤも予想外だったようだ。
「お姉さん重くないの?」
 目を丸くして見上げてくるロニヤに、リーヴェは正直に答える。
「慣れればね」
 基本的には、鉄の重りを下げて歩いているようなものだ。
 最初に剣を腰に下げて歩き回った時は、重くて大変だった。
 しかもこれを長く続けていると、重さに本人が慣れても筋肉や骨に負担がかかるらしく、帯剣していなくても左肩がやや下がる形に歪むのだ。
「近頃のお嬢様達は剣も持つのかい?」
 街から離れた場所に住んでいるからだろう。それが最近の流行なのかとサンナにたずねられたので、
「そうなんです。物騒ですからね」
 リーヴェはつい、嘘をついてしまった。

 ややあって、セアンも着替えて部屋から出てきた。
 生成のシャツの上に麻色の外衣に濃い色のズボンを履いている。
 騎士服や貴族らしい服以外のセアンを初めて見たリーヴェが目を丸くする。
 正直、平凡な農村の村人には全く見えなかった。というか麦わら帽子が似合うこの衣装をきっちり着込んだら、さぞかし綺麗な顔だけが浮いて、似合わないだろう。
 本人もそれをわかっているのか、シャツの襟元を開け、外衣をくずして着ることで、なんとか滑稽さをカバーしている。
 そこへ金の髪を隠すため外套のフードを被ってしまうと、旅から旅の生活を送っているまだ売れていない吟遊詩人みたいだ。
 楽器でも抱えていたら完璧に違いない。
 とりあえずはリーヴェと同じく剣は下げているものの、一応騎士には見えなくなっていた。
  でも、
「どうあっても、平凡な村人にはなれないのね……」
 リーヴェはしみじみと、セアンには扮装は向かないなと考えた。
「お前はあつらえたように似合っている」
 セアンに平凡さにお墨付きをもらい、リーヴェは思わず言い返した。
「悪かったわねっ!」
 しかしのんびりとお互いの格好について言い合っている場合ではない。
 乾いた服など荷物をまとめ、ロニヤが引き出してくれた馬にくくりつけ、リーヴェとセアンは出発した。
 サンナとロニヤは、妄想話を再び始めながら見送ってくれた。

「母さんなんだか私、旅の吟遊詩人に騙された村娘っていうお話を思いついたんだけど」
「ああ、あたしもそれが一番ぴったりな気がしてきたよ」

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