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 白い花が、ふいに強く吹いた風に散り、庭園で笑いさざめく人々にふりそそぐ。
「あら」
 アマリエは赤い飲み物の上に浮かんだ、白い花弁を見て微笑む。
「風のいたずらですね」
 隣にいたラルスも笑った。
 ヴァルデマー公爵の子息である彼は、父親が復調してきたものの、まだ機敏には動き回れないため、代理として園遊会に出席していたのだ。
「それで……女性を助けた近衛は誰なのかわかったのですか?」
 アマリエに、セルマの一件を聞かされたラルスが尋ねる。
 問われたアマリエは、言いにくそうに言葉を濁した。
「ええ、まぁ。けれどその相手が問題で……」
「女性に好かれて問題になる相手?」
 ラルスは困惑した表情になる。
「近衛で女性に好かれて困る人間はいないと思うのですが……」
「いえ、それが本当は近衛じゃなくて」
「近衛じゃない? では制服を盗んだ者がいたとか」
「いえ、制服は王妃様の許可を得て与えられているのです。ただ表沙汰にしたくないというか」
 そしてアマリエはちらりと視線をそらせる。
 同じ方向を見ると、そこには漢らしくグラスの中身を一気に煽るリーヴェの姿があった。
「……まさか」
 彼女なのか、とラルスは驚く。
 確かに彼女は強い。以前、公爵家での立ち回りを見ているから、ラルスは知っている。
 だから女性を助けたという話は納得がいった。
 しかし無理に筋力を鍛えすぎていないせいか、彼女は首の細さひとつとっても、さすがに他の騎士とは見違えようもないではないか。
「まさか」
「それが、まさかではないのです」
 ラルスがその人物を察した事で、アマリエは少しほっとした様子で話し続ける。
「一応確認をとったのですが、王妃様の近衛で昨日件の女性と係わった者はおりませんでした。それに加えてその女性から聞いた特徴に、全て当てはまるのがリーヴェしかいなくて」
 ラルスはリーヴェに同情した。
 彼女がその強さのあまり、婚約を打診した相手から断られたという話はラルスも知っている。あげく女性に言い寄られるとは、なんとも不憫というか。
「わかりました。私がその女性を捜し出しましょう。で、その女性の特徴は?」
「黒髪で赤いドレスをお召しでした。昨日も似た色を着ていらしたとリーヴェに聞いたので、赤がお好きなのかしら。瞳も黒でしたわ。あまり高くはない声でしたけれど、声が歌い手のように良く通る声で、お名前はセルマ」
 ラルスは思わず手に持ったグラスを落としそうになった。中身が少なくて幸いだった。
「大丈夫ですか?」
「あ、いや……」
「どなたかお心当たりでも?」
 尋ねてくるアマリエに、ラルスは珍しく力なくうなずいた。
「少し前、私が陛下に引き合わせた女優です」
「まぁ……」
 さすがのアマリエも目を丸くした。
「しかし知り合いならばやりやすいというものです。私が誤解をといて参りましょう」
 国王はまだ彼女に執心している最中だ。
 誤解を解けば穏便に事は収まるだろう。ラルスもそう考えていたのだ。



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