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 リーヴェ側の一隊はごく少数だ。
 女官の静養に、そんな大人数をつけるわけにもいかないのが理由の一つ。少数の方が機動力が高いのが一つ。
 なにより女官本人が護衛対象ではないのが最大の理由だ。
「今晩、出発は馬車と馬を使う。その後王都を出て東の町、ヴァドステーナで馬車から騎馬に変えてもらう。馬の手配は既にされている」
 近衛の詰め所の中央には、ステフェンスの地図が広げられている。
 指さしてのセアンの説明に、リーヴェはうなずいた。
 出発は今晩だ。基本的には臨機応変に、とにかくアグレル公の元へたどり着くという単純な任務だが、複数人で事にあたるため、通る道、方針を確認しておく必要があった。 
「そこから一気に南東へ。速度が重要だ。極力回り道はしたくない。ティセリウス達が引きつけられなければ、伏兵を俺たちが全て襲撃相手を引き受けることになる。その場合はやむを得ないので散開して相手を攪乱。先で合流するつもりで敵を避けて突き進め」
 身を乗り出すようにして聞いていたリーヴェとディックが、少し離れて腕を組むトールがうなずく。
 リーヴェと共にアグレル公の元を目指すのは三人だけだ。
 それだけに緊張もひとしおだった。
 ティセリウス側もまた、同じようにアグレル公の元を目指すため無視できないとはいえ、敵がどれくらいの規模でアグレル公を襲うのか、それを阻止しようとする王妃側の人間を迎え撃つためにどれほどの人数を投入するつもりなのか、ほとんど分からないのだから。
「かといって四人じゃ下手に分かれると各個撃破されておわりだ」
 トールの意見に、セアンがうなずく。
「分散する際は、二手に。俺とリーヴェ、そしてトールとディックが組になる」
「俺は依存ないですよ。リーヴェと組まされたらどうしようかと思ったぐらいで」
 そう言ったディックの足を、リーヴェは無言で踏んでやった。
「いって!」
「一言余計なのよディックは」
「あんまりじゃれるなよ二人とも」
 トールが呆れがちながらも、間に入ってくれる。なので、リーヴェは引くことにした。ディックの方も舌打ちしつつ、矛を収める。
 それを満足げに見たトールは、セアンに話を振った。
「ところでセアン、俺とリーヴェっていう選択肢は考えなかったのか?」
 トールに言われて初めて、リーヴェもそういう組み合わせも可能だと思い至る。いうなれば、二組とも保護者と被保護者の図式だ。
 近衛騎士としては標準的なディックと、隊の中の実力では上から数えて片手で足りるトール。
 それなりだと自負はあるが、耐久力と腕力に難点のあるリーヴェと、剣の腕に関しても規格外なセアン。
 別にディックとリーヴェを入れ替えても、問題はない。
 問題はないのだが、セアンがこの組み合わせにしたのには、例の理由が絡んでいるはずだ。
 それを知られたくないトールにどう説明するのだろう。ちょっと興味しんしんでセアンの回答を待っていたのだが、
「ああ、それなら理由は簡単だ。トール、お前ならこいつを女扱いするだろう? そこまでいかなくとも、手心を加えるはずだ」
「いや……まぁ……。ディックと同じってわけにはいかないだろうが」
 戸惑いつつ答えるトールに、セアンは言い切った。
「俺はそんなつもりはない。駄目なら切り捨てるまでだ。そうでなければ足手まといになりかねん。だから二手に分かれた後、合流した時にこいつが居ない場合も想定しておいてくれ」
 それを聞いたトールは、少し目を見張り、ため息をついた。
「言い切れるお前がちょっと酷い奴に見えるよ俺。まぁわかった」
 トールがうなずき、話はそこで終わる。
「まぁ、セアンはそう言うだろうと思ったけど……」
 そして間違っていない対応だろうと思うのに、なんだか微妙な気分になるリーヴェだった。
 その後、セアンはホーヴァルへの報告のために立ち去り、ディックも出て行ってしまうと、王妃の部屋に近い騎士の為の詰め所に、トールとリーヴェの二人だけが残された。
 地図を丸めて紐で縛り、渡す。
 受け取ったトールが「そういえば」と言い出す。
「お前セアンと仲良いよな」
「悪くはない……と思うけど。でも公然と見捨てる宣言された直後に、仲良いとか言われるとは思わなかったですけど」
 リーヴェはため息混じりに返事をする。
 仲は悪くない。喧嘩しているわけでもない。
 ただ仲良しだと言われると、微妙な気分だ。
 なのにトールは面白そうに笑う。
「ありゃお前を信用してっからだろ。それにお前が来てから、あいつが人とまともにしゃべる姿見たって言ってる奴も多いぐらいだ」
 そう言われる心当たりがないでもない。
 なにせリーヴェが初めてセアンと会った頃、彼は女官仲間からも得たいが知れない、幽鬼のごとき認識だったのだ。が、今では少々違う。変人と言われるぐらいならまぁ、人間として見られるようにはなっているはずだ。
 そう認識が変化したのは、女官仲間曰く、リーヴェが平気で話していたから、だという。
(話し合う必要性が多いから、そうしてただけなんだけど……)
 その内容は誰も知らないのだ。
 当然気が合って、しゃべっているのだと思うだろう。
「お前は妃殿下の事を気にしているみたいだが、俺としては、セアンが前よりも特定の女に関わり始めた方が興味深いんだがな?」
 それを聞いて、リーヴェは理由を思い出して「うへぇ」と思った。
 気持ちが顔に出ていたのだろう。トールがぎょっとした表情になる。
「ああ、なんていうかあれですね。私アレのオカルトなのに慣れすぎたせいですよきっと」
 ぼかして言うと、
「そうか……?」
「そうなんです。絶対」
 他に言いようがないのだ。
 真実は口に出せない。
 秘密を知ったリーヴェとなら、万が一の時に後始末に協力させやすいなんて思ってるだろうなんて。
 もし洗いざらいはき出したなら、トールだって「うへぇ」と言うはずなのだ。

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