Celsus
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先行部隊の指揮は、美麗なる騎士ティセリウスだ。
少し巻き気味の金の髪を首元でくくった彼は、宮殿のエントランスへ見送りに来たレオノーラ妃の前にひざまづく。レオノーラ妃は右手を差し出し、ティセリウスがごく自然な動作でその指先に手を添え、口づけお落とす。
美男美女の組み合わせでそんなことをするのだから、かなり眼福な光景だった。
レオノーラ妃の斜め後ろからそれを見ていたリーヴェは、思わずため息をついてしまう。巻き戻して今の光景をもう一度見たいほどだ。
「でも違うんだろうなぁ」
やっぱり、レオノーラ妃は彼にすら特別な感情を抱いているようには見えない。
やはり騎士の中にレオノーラ妃の好きな人はいないのだろう。だとしたら、一体誰なのか。他人に恋する相手には興味が湧かないと評判のアンドレアスが言うのだから、かなり信憑性は高いと思うのだが。
「何考えこんでんだよ」
隣にいたトールに、指先で頭をこづかれる。
リーヴェはティセリウスが騎乗し、出発していく姿からトールに視線を移す。
「ちょっと気になることがありまして」
「何だよ? お前が考えてわかることか?」
「ひどいっ!」
「さ、俺達も準備に向かうぞ」
歩き出すトール。リーヴェはあたりを見回し、レオノーラ妃にはアーステン他、隊長も付き従っているのを確認した。それからトールを追う。
「で、何小難しい顔してたんだ?」
追いついた所でトールが尋ねてくる。
思えば騎士達のことは騎士であるトールに聞くべきだろう。……セアンに聞いてもいいのだが、アマリエにああいう対応する彼のことなので、鼻先で笑われそうで聞きづらかったのだ。
「参考意見として聞かせてほしいんですけれど。妃殿下って騎士の中にお好きな方がいるとか、そういう噂ってなかったんでしょうか」
「…………は?」
トールが庭先に降りたところで立ち止まる。
「だから、妃殿下にはどなたか頼りにしてらっしゃる方とか、思っていらっしゃるそぶりとかって、私が来る以前は特になかったのかと……大丈夫ですか?」
珍しく口を開けたまま、トールが呆然としている。顔の前でリーヴェがひらひら手を振ると、自分が静止していたことに気づいたようだ。
咳払いしてからトールは言った。
「い、いや、そういう噂は聞いたことがなかったが……どうしてそんな話を?」
「妃殿下は陛下とはずっと疎遠でいらしたでしょう? でも他国へ来て、しかもこんな風に争う相手がいる心休まらない状況で、どなたか精神的に頼りにされる方とかいないのかな、と」
言われて、トールは初めてそのことに気づいたようだ。
「まぁ確かに……。妃殿下も一人の女性ではあるし、恋の一つや二つしていてもおかしくない年頃ではある……」
「でしょ? ちょっと疑問に思ったんですよ。でも見たところ、一番信頼してる人ってアマリエ様かホーヴァル隊長ぐらいな感じだし。お見方の貴族のお歴々とは、なんか対等に渡り合う関係、みたいな感じで。父親代わり、くらいに頼みにしてらっしゃる人がいてもおかしくないのになぁと」
「父親代わりくらいはいるとは思う……んだがな」
「心当たりが?」
トールは言い難そうに、ぼそりと答える。
「それに近いのは、今回問題になってるアグレル公爵だろうな。妃殿下より十歳年上で、故郷を任せているほどだし」
「そっか……」
十歳か、とリーヴェは心の中で考える。
それぐらいの年の差であれば、恋愛対象内かもしれない。とすると、やはりアグレル公爵がそうなのだろうか。
と、今度は頭を二度、南瓜のように叩かれる。
「とりあえず任務のことを考えろ。ティセリウス達が派手に出て行ってくれたが、先方がそれで騙されてくれるとは限らないからな」
少し巻き気味の金の髪を首元でくくった彼は、宮殿のエントランスへ見送りに来たレオノーラ妃の前にひざまづく。レオノーラ妃は右手を差し出し、ティセリウスがごく自然な動作でその指先に手を添え、口づけお落とす。
美男美女の組み合わせでそんなことをするのだから、かなり眼福な光景だった。
レオノーラ妃の斜め後ろからそれを見ていたリーヴェは、思わずため息をついてしまう。巻き戻して今の光景をもう一度見たいほどだ。
「でも違うんだろうなぁ」
やっぱり、レオノーラ妃は彼にすら特別な感情を抱いているようには見えない。
やはり騎士の中にレオノーラ妃の好きな人はいないのだろう。だとしたら、一体誰なのか。他人に恋する相手には興味が湧かないと評判のアンドレアスが言うのだから、かなり信憑性は高いと思うのだが。
「何考えこんでんだよ」
隣にいたトールに、指先で頭をこづかれる。
リーヴェはティセリウスが騎乗し、出発していく姿からトールに視線を移す。
「ちょっと気になることがありまして」
「何だよ? お前が考えてわかることか?」
「ひどいっ!」
「さ、俺達も準備に向かうぞ」
歩き出すトール。リーヴェはあたりを見回し、レオノーラ妃にはアーステン他、隊長も付き従っているのを確認した。それからトールを追う。
「で、何小難しい顔してたんだ?」
追いついた所でトールが尋ねてくる。
思えば騎士達のことは騎士であるトールに聞くべきだろう。……セアンに聞いてもいいのだが、アマリエにああいう対応する彼のことなので、鼻先で笑われそうで聞きづらかったのだ。
「参考意見として聞かせてほしいんですけれど。妃殿下って騎士の中にお好きな方がいるとか、そういう噂ってなかったんでしょうか」
「…………は?」
トールが庭先に降りたところで立ち止まる。
「だから、妃殿下にはどなたか頼りにしてらっしゃる方とか、思っていらっしゃるそぶりとかって、私が来る以前は特になかったのかと……大丈夫ですか?」
珍しく口を開けたまま、トールが呆然としている。顔の前でリーヴェがひらひら手を振ると、自分が静止していたことに気づいたようだ。
咳払いしてからトールは言った。
「い、いや、そういう噂は聞いたことがなかったが……どうしてそんな話を?」
「妃殿下は陛下とはずっと疎遠でいらしたでしょう? でも他国へ来て、しかもこんな風に争う相手がいる心休まらない状況で、どなたか精神的に頼りにされる方とかいないのかな、と」
言われて、トールは初めてそのことに気づいたようだ。
「まぁ確かに……。妃殿下も一人の女性ではあるし、恋の一つや二つしていてもおかしくない年頃ではある……」
「でしょ? ちょっと疑問に思ったんですよ。でも見たところ、一番信頼してる人ってアマリエ様かホーヴァル隊長ぐらいな感じだし。お見方の貴族のお歴々とは、なんか対等に渡り合う関係、みたいな感じで。父親代わり、くらいに頼みにしてらっしゃる人がいてもおかしくないのになぁと」
「父親代わりくらいはいるとは思う……んだがな」
「心当たりが?」
トールは言い難そうに、ぼそりと答える。
「それに近いのは、今回問題になってるアグレル公爵だろうな。妃殿下より十歳年上で、故郷を任せているほどだし」
「そっか……」
十歳か、とリーヴェは心の中で考える。
それぐらいの年の差であれば、恋愛対象内かもしれない。とすると、やはりアグレル公爵がそうなのだろうか。
と、今度は頭を二度、南瓜のように叩かれる。
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気の向くまま書いた話を、気が向いた時にUPしていきます。
著作権は全て奏多に帰属します。ご注意下さい。
※R18作品は今のところ一切書いていません。
ご用のある方は↓(★を@に変更して)まで。
kanata.tuki★live.jp
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