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 三日後。
 星祭りの日がやってきた。
 騒動の発端となったセルマが、リーヴェと一緒にいたいと願っていた行事だ。
 昼間行われる神殿儀式や宴が終わると、貴族は皆家族や親しい人と静かに過ごす。
 夜になると見えるようになる流れ星を仰ぎ、ミールの枝にその光の恩恵が宿るように祈るのだ。
 願いが叶うように、と。
 一方、民衆はその行事に乗じてお祭り騒ぎをする。
 お祭り騒ぎの方に馴染み深かったリーヴェは、初めて神殿での静粛な儀式に参加した。
 高く緩やかな円錐状になっている屋根は、青と緑だけを使われた硝子の光を透かして、中央に美しい模様を描き出している。
 色つきの光のベールをくぐり抜けるようにして、レオノーラ王妃や国王、主要な大臣や貴族達は祭壇の前に、ミールの枝をささげた。
 冬の時代にも生き続けたというミールの樹は、聖木として扱われている。この日はミールの枝を飾って、神の恵みの顕現であるといわれる流星の輝きを、自分の元に留めようという儀式なのだ。
 その間中、シャーセの弟カールの視線を感じて、リーヴェは手に汗が浮かぶほど緊張していた。
 カールは国王の侍従だという。だから彼はアンドレアスの側にいた。神殿の中央を開けて左右に分かれて整列している都合上、国王側の前になるのが王妃側の者達だ。
 アマリエの背後にいるとはいえ、リーヴェは確かにカールが自分を観察していると意識していた。
 一方のカールは国王の取り巻きや国政を担う大臣達とも近い位置に居やすい。
 今こうしている間も、彼は誰かに暗示をかけることができるだろう。
 けれどリーヴェがそれに気付いたところで、何もできない。
 セアンもだ。
 訴えても、その力のうずまく音は幻聴としてかたづけられかねない代物だから。
 そして、暗示をかけられた相手が被害者だと言ったところで、本人を含めて皆、怪我をしたわけでもないので証拠に欠ける。
 なんともやっかいだった。

 しかもカールのことをセアンに話した時、彼は言っていた。
「暗示をかけられた相手が、公爵の時のように人を害する暗示をかけているわけではないなら……見つけるのは簡単なことじゃないだろうな」
 暗示とは思い込みだ。
 誰しも多少の思い込みはあるし、それと暗示との境目の区別をつけることは難しい。それは相手の心を覗くことができるセアンであっても変わらないようだ。
 ただ、リーヴェに暗示が効かなかった事については、わからないと言っていた。
 セアンの方は暗示をかけにくいということはないらしい。
「もしかしたら、ニナと似て力が弱いのかもしれないが」
 調べてみる、と言ったセアンからはあの後特に報告はない。

 とりあえず儀式の間にカールが術をかけた様子もなく、特にリーヴェに接触しようともしてこなかった。
 レオノーラ王妃が宴の準備をするため自室に引き上げたのを見届け、リーヴェは自分も部屋に戻る。
 ため息をつきつつ自分も宴の支度をしようと扉を開けたところで、
「捕まえましたわ!」
 まふっと柔らかな腕に後ろから捕まえられた。
 自分を捕獲したのは、セルマだ。彼女は葡萄酒色に黒のレースが飾りについたドレスを着て、振り返ったリーヴェをにこにこと見つめてくる。
「……え? な、なんですか一体?」
 どこから出てきたのかと思えば、リーヴェの部屋に隣接した侍女部屋から、下級女官が顔を出して笑っている。
 なるほど、彼女に隠してもらっていたらしい。
 セルマは艶やかに笑みを浮べて言った。
「さ、私とお祭りに行きましょう!」
 ぐいぐい腕をひっぱる彼女に、リーヴェは驚く。
「え? でもわたし、この後も仕事が……仕事が……」
「大丈夫ですわ。きちんと王妃様には了解をとっておりますから」
「ほんとですかーっ!?」

 その少し後、部屋で言付けられたというアーステンから手紙を受け取り、レオノーラ王妃は簡素なその文を読んだ瞬間に笑い出す。
「……レオノーラ様?」
 どうしたのかと尋ねるアマリエに、レオノーラは笑いながらアマリエに手紙を渡した。
「リーヴェを誘拐しました? 私の願いを叶えるためお祭りに連行します、星神に免じてご容赦下さい?」
 読んだアマリエは呆然とする。
 セルマは勝手にリーヴェを連れ出すので許してくれと書いて来たのだ。しかもこの書き方からして、事後承諾である。
「一応、彼女に代わって警護に私が加わることにいたしました」
 アーステンの言葉にレオノーラはようやく笑いを納めて言った。
「ならば問題はありませんね。今日はあの陛下を振り回して楽しませて下さったセルマに、ご褒美ということでリーヴェを貸しましょう」
 

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