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「知り合いか」
 今だ馬上にいるセアンに、リーヴェはうなずく。
「以前コルヴェール侯爵に雇われてたことがある傭兵団よ」
「なるほど」
 納得したセアンから、リーヴェはラウリ達へと視線を戻す。
「で、わざわざ旧交を温めにきたわけじゃないようだけど?」
「まぁそうだね」
 内心緊張し、口調が堅くなるリーヴェとは違い、ラウリは肩をすくめて答えた。
「君も予想しているだろう? 俺たちはリンドグレーン代官アグレル公一行の元へ行こうとする者を排除するよう言われている」
「アグレル公を殺せと言われてるわけじゃなくて?」
 傭兵団は五十人以上はいたはずだ。ラウリ達の他にトール達を追った人間がいたとしても、まだ大多数が余っているのだ。
「昔のよしみで教えてあげよう。僕らが受けた仕事は、排除だけだよ」
 リーヴェは舌打ちした。
 思ったより状況が悪いのだ。旧知の傭兵団だけでもやっかいなのに、確実に『アグレル公を殺す』ために別な者が雇われるか、もしくは派遣されているということだからだ。
 ますます急がなくてはならない。
「私達を通してほしいんだけど」
 リーヴェは真正面から申し出る。
「それじゃ僕たちは規約違反をすることになる。そんな傭兵団はどこでもやとってもらえなくなるよ」
「いくらでも誤魔化せるでしょ? なんだったら、こちら側であなた方を雇うわ。だから先方との契約を切ってくれない?」
 アグレル公の安全が確保できるとなれば、王妃も彼らを雇うことに否とは言わないはず。そう思っての申し出だったが、
「それは団長に掛け合ってもらわなきゃな。俺たちの一存でそんなことしてみろ、木に吊されて放置されるぜ」
 ラウリの背後にいた男達が、そう言って笑う。
 確かにそうだとリーヴェにもわかるので、なおさら悔しかった。
 そんなリーヴェに助け船をだしてくれたのは、デルトという大柄な髭面の傭兵だ。
「まぁまぁ、もう一つ昔のよしみでいいこと教えてやるよ。お前、まだ俺たちの団の規則は覚えてるか?」
「規則?」
 首をかしげかけたところで、はっと記憶が蘇る。
 カーリナの婚約を破棄するため、協力を仰ぐときに言われた言葉だ。
 ――決闘を行った場合、敗者は勝者の命令を聞かねばならない。
 あの時、リーヴェは手加減をしてもらい、自分と年の変わらない少年が団の代表として立ったため、無事に勝つことができ、団長に協力をとりつけたのだ。
「決闘しろってこと?」
「それなら団長にもたいがい的にも言い訳がたつな。敗北の上で仲間を認めた人間を、団長の所へ連れて行った、って方が現実的だ」
 なるほど、とリーヴェは納得する。
 決闘で傭兵団に仲間入りをしたとなれば、アグレル公に近づいているだろう団長の傍まで、戦闘に気を遣わずに行けるのだ。
「わかったわ。それじゃ――」
 自分と決闘する人間を選んでちょうだい。そう言おうと思ったリーヴェを、止めた者がいた。
「俺がやろう」
 馬を下り、木に手綱を結わえながらセアンが言い出した。
「え?」
「お前がやるより現実的だ」
 セアンがそう言うのは最もだ。けれど問題がある。
 ラウリ達は窮地のリーヴェだから、こんな破格の申し出をしてくれているのだ。それに卑怯だが女だというハンデもあるので、ラウリ達も本気でこちらを傷つけようなんてしないだろう。
 けれどセアンと団の人間にはしがらみがない。
「で、でもセアンはこの団に入ったこともないし」
 ていうか私の計画が……と言いかけてリーヴェは口をつぐむ。
「代理だ。女に負けるよりはいいんじゃないのか?」
 セアンが水を向けると、ラウリ達が笑った。
「いいだろう。俺たちも代理を立てるぐらいはするからな。それにリーヴェ」
 ラウリがリーヴェに言う。
「仮にも女装姿の人間相手に、決闘する気にはならないからな」
「女装じゃなくて本装!」
 思わず言い返すリーヴェに、皆笑いながらセアンを囲むように輪を作ってはなれる。
 もう誰もリーヴェの言うことなど聞いてくれない気なのだ。そうわかったリーヴェはハラハラする。
「さ、お前はこっちだ」
 デルトに手を引かれてリーヴェも離れさせられる。
「でも……」
 抵抗しようとしたリーヴェだったが、不意にセアンがリーヴェの頭をぽんと叩いたことに気をとられ、たたらを踏みながら引き離されていった。
 一方のセアンはラウリと向き合う位置につく。
 どうやら対戦相手はラウリのようだ。
 二人同時に剣を抜き、剣先を合わせる様子を見ながら、リーヴェは唇をかんだ。
「そんなに心配か?」
 デルトに尋ねられてリーヴェは即答する。
「殺す気で掛かられたら、セアンも手加減せずにラウリを殺しそうで恐いのよ」
「はぁ?」
 男みたいに割り切れない自分は、やっぱり女なのだろうとは思う。だけど、できればどちらも怪我などしてほしくないのだ。軽口がすぎるとはいえ、自分に練習をつけてくれたりしたラウリにも無事でいてほしいし、いろいろと迷惑かけっぱなしなのに、自分に友情をもってくれてるセアンが怪我をするのも嫌だ。
 ぐっと手を握りしめたその時、二人が同時に足を踏み出した。

 
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